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※この物語は連載です。
▶ すべての始まりはこちら(第一話:訪問記)

すべてはAAバンに残されていた2枚のMOT(車検証)から始まった。
この車両はブルーからイエローへ塗り替えられている。
同じ車でありながら異なる人生を歩んできた痕跡だ。
ここで一度、バンに残された書類と装備を整理してみたい。
キーホルダーの裏面に刻まれたメッセージ。
無線機と太いアンテナの関係。
ジャッキ、ロープ、工具箱、消火器などの備品。
フリート保険と書かれた赤いファイル。
そして――車体の下から現れた青い塗装。
どれも単体では決定打とは言えない。
だが、それらのピースをつなぎ合わせたとき、ひとつの輪郭が静かに浮かび上がってくる。
もしこの車が単なるレプリカだったとしたら。
ここまで実用的な装備を、ここまで自然な形で残すだろうか。
しかも、それぞれが独立して存在しているのではなく、ひとつの用途に向かって整合している。偶然にしては、あまりにも出来すぎている。
このバンは最初からAAの車両ではなかった。それは、ほぼ間違いない。
昨年の夏、偶然見つけたAAのオリジナル車両。実物を目にしたとき、不思議な縁を感じた。そして納車後、この車がかつてブルーだったことを知り気持ちは揺れた。
実働したAA車両なのか。それとも後から再現されたレプリカなのか。
――いや。
“AAとして現場で使われていた車両” である可能性は極めて高い。
そう考えたほうが、すべてが自然につながっていく。
なぜ、あの無線機が残されているのか。
なぜ、あの太いアンテナが必要だったのか。
なぜ、フリート保険の痕跡があったのか。
なぜ、塗装の下に別の色が存在していたのか。
すでにHeritage Certificateの申請は済ませている。
おそらくそこに記されているのは、この車が「どこで生まれたのか」という事実だけだろう。
だが今、私が知りたいのはそこではない。
このバンは、どこで、誰に使われ、どんな現場を走ってきたのか。
その半世紀の時間の中にこそ、この車の本質がある。
その真相に、もう少しだけ近づいてみたい。
そして、その手がかりは――すでにこの車に刻まれている。

シャシー番号――その番号を辿ることでたどり着いたのが英国に残された“もう一つの記録”。次の記事ではシャシー番号から読み解く「Heritage Certificate」の申請方法を解説します。
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Heritage Certificateの申請方法|完全解説